一枝の寒梅
嗚呼、この人はわたしに言っているのか。
花嫁なのだから、それは当たり前なのだけれど。
――決して婚姻が嫌なわけじゃない。
むしろ、喜ばしいことだと分かっている。
まだ若いのに婚約者がすぐに見つかり、地位はそれ程高いわけではないけれど、生活は安定するし、それなりの利点をわたしには十分な程持ち合わせた人物。
――それなのに。
これを素直に喜べない自分は、どうしてこんなにも可愛げがないのだろうか。
質素な木造で作られた歩くたびにミシミシと鈍い音を立てる廊下を、案内する女性の背中を追いながらとぼとぼと歩く。
白無垢を引きずるたびに、汚してしまわぬようドキドキしながらゆっくりと足を前に進めた。
ふと、廊下の窓から見える景色を眺める。
完璧なまでの晴天。雲ひとつない空。
燦々と輝きを放つ太陽。
その太陽の光線がわたしの顔を明るく照らす。
その輝きまでもがわたしを祝福してくれているのだろうか。
しかし、今のわたしにはその輝きをただ眩しいと感じることしか出来なかった。
――母と父は先に会場となる座敷に足を運ばせている。
後はわたしと武市さんが入場するだけだった。