一枝の寒梅
会場となる座敷入り口には、既に紋の模様が施された紋付を身にまとった武市さんがいた。
「――とみ。見違えたよ……」
昔からのわたしの名前の呼び方をして、白無垢姿のわたしに目をやり、ふわぁっと優しげな笑みを浮かべる武市さん。
「……武市さんも素敵です」
視線を足元に向けたままそう呟いた。
「そうかな? いつもとなんら変わらないと思うけどな」
自分の姿を見てははっと微笑む武市さんに少しだけわたしも微笑んだ。
――それから新郎新婦がそろって入場。
武市さんの親戚やわたしの親戚がわたしたちに祝福の言葉を投げかける。
その中、わたしはただ下を向いて武市さんの隣を寄り添い、小さな歩幅でただ前を歩いて行く。