猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した
それでもやはり、夜になっても来ないのは心配でもあるが。
――世の中には噂すれば影ありの言葉があるように、待ちかねた当事者は実を正せば、もうすぐそこにいた。
レインが小腹空いたので執務室から出ようとした時、小柄な少女とぶつかりそうになる。
普段なら、ここでわざとぶつかり、倒れた女性を助け、たらしらしく優しく紳士的に話しかけるのがレインの鉄則だったりするが、軍服着用ではない一般人がここにいることへの疑問が先に出た。
「迷子……ってな、わけじゃないよねー」
「迷子じゃありませんよー。もうそんな歳でもないですしー」
レインと似た間延びした声。ただレインが飄々としたがつくとなれば、少女のしゃべり方からはぽわぽわしたものが見える。
扉は開けたまま、自然とルカもミカエルも、その少女に目をやった。