猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した
怒りの現れだが、取り乱したところで何も変わらないからこそ、こんな些細な表現しかできない。
軍人とは駒だ。命令され、動き、戦い、時には切り捨てられと、上の指示には逆らうことなど許されない。
ミカエル一人が喚いたところで命令が却下されるわけでもないし、ルカとて同じ。上からの命令を断ったりなどしたら、それこそ“不要な駒”として捨てられる。
どうすることもできない権力。それが言うのだ、他国の腹を探ってこいと。
もしも何か思惑あっての同盟ならば、ルカがその領土に入った時点で何かしらの“過程”があるだろう。
国としても入念にはなりたいし、上としてはルカという早くに大佐となった、着実に上へと昇る輩に我が身の地位を脅かされたくない。
一石二鳥ではないが、あちら側でルカに何かあろうともこちらには一切の“被害”はない仕組みとなっていた。