猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


もともと、顔を隠す布が巻き付けられているため生首を素手で持っているわけにないしろ、吹き出る血が鬱陶しいのも事実。


ボア素材の表面で巻けば血を吸水して少しはマシか。三秒ほど考えたあとにルカは受け取った。


「高かったんですよねー、それ」


「……、私に買い直せと?」


「とんでもないですー。どっちにしろ、返り血ついてましたし、どうせ捨てるつもりだったんで。でもー、頑張ったご褒美に、なんてー」


どっちなんだと言いたくなることにルカは息を吐いた。器用に首を包みながら、改めて死屍累々が水に打ち捨てられた惨状を目にする。


エレナ狙いにしても、殺されれば王の思うつぼになっていたのだから頑張ったと言えば頑張った。


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