さくら色 〜好きです、先輩〜

そして次の日、俺は背中を押されて歩道橋から突き落とされた。

階段から転がり落ちる時に見えた不敵に笑う夏樹の顔は今でも忘れられない。



気が付いた時には病院のベッドの上だった。

俺が目を覚ましても、悲しそうな顔をする親父達と感覚のない足でなんとなく悟った。


もうサッカーするのは難しいんじゃないかって。


医者はリハビリすればまた前みたいにサッカー出来るようになると言った。

ただそのリハビリは過酷で相当の覚悟がなければ耐えられないと…


何も考えられなかった。

頭の中が真っ白になるってこういうことなのか…

夢が完璧に崩れ去ったわけではないのに。

まだ希望はあるのに…


今の俺にはその希望が見えない。


入院中に警察が来て落ちた時のことを聞かれた。

俺は自分で足を滑らしたと言ったが、俺の背中を押すところを見た人がいたらしい。

あんな嫌がらせをされても消えろって言われても、俺はまだ夏樹を信じたかった。



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