さくら色 〜好きです、先輩〜

…来ちゃった。


私は今、運動公園の入り口の前に立っている。


LHRの後、那奈に「善は急げ。決心が鈍らないうちに今日行きなよ」と何度も念を押された。

そして、早速部活の後に公園まで来てみたけど…


「…緊張する…」


先輩は若菜先輩の情報だとほぼ毎日広場で軽く練習しているらしい。

広場に入れば先輩がいる。

そう思うと、緊張でなかなか一歩が踏み出せない。


入口に着いてから、かれこれ5分は経っている。

勇気を出さなきゃ、何も始まらない。

自分から動かなきゃ、何も変わらない。


目を閉じて深く深呼吸した。


「よし!!行こう」


私は気合を入れて公園へ足を踏み入れた。



梅雨は中盤に差し掛かり、徐々に日が伸びて来た。

公園の遊歩道には大きな紫陽花の花が見頃を迎えている。



ーーーーバンッ!コロコロ…バン!

広場に近付くにつれてボールを蹴る音が徐々に大きくなってくる。



「…っ、先輩…」


広場にいるのは練習着を着た先輩だけ。


先輩は夕陽で茜色に染まり、息を呑むほど綺麗だった。

汗をシャツの袖で拭ったり、髪を掻き上げる仕草。

膝に手をあてて呼吸を整える姿。

先輩の行動一つ一つに心臓が反応してぎゅっと締め付けられる。



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