さくら色 〜好きです、先輩〜
私は里美に連れられて、桜の木が植えられた庭に来ていた。
木の下に人影が見え、咄嗟に校舎の影に隠れて庭の様子を伺う。
「あ!先輩だ!」
「…告ってた女の子がいなくなってる。今がチャンスだよ」
先輩は一人、空を見上げていた。
その晴れ晴れとした横顔に、トクンと心臓が震える。
正直、告白の返事が気になる。
だけどそれは私が踏み入れていい領域ではないし。
それに今、私には私の伝えるべきことがあるから。
私はゴクンと息を呑み、ゆっくりと深呼吸をした。
「行ってくる!」
「葵!ファイト!」
里美はポンッと優しく背中を押してくれた。
「先輩!」
「西原さん?」
振り返った途端、なんでここに?と言わんばかりに驚いた表情を浮かべる先輩。
「すみませんでした!!この間、偉そうなこと言って…」
「え…この間?…ああ、広場でのこと?全然気にしてないよ」
「でも昨日も今日も先輩のこと探したのに会えなかったから…私、避けられてるのかと思って…」