さくら色 〜好きです、先輩〜
ーーーーピッピー!
試合開始の笛が鳴り響いた。
選手が一斉に走り出し、砂埃が舞う。
汗ばんだ身体同士が激しくぶつかり合いながらボールを奪い合う。
久しぶりの試合に、俺の心臓は大きく震えた。
大きなフィールド。
同じユニフォームを着た仲間。
俺を信頼して寄越すパス。
逆に仲間を信頼して託すパス。
「奏人!シュートだ!」
ーーーーパシッ!!
「ゴーーーール!!」
審判の声を合図にクラスの仲間や観客席から歓声が沸き起こった。
「「「きゃー!」」」
「「「よっしゃー!」」」
仲間が俺の周りに集まってきて、髪の毛をボサボサにしたり背中に覆いかぶさってくる。
この感覚…なんで俺は忘れてたんだろう…
ああ、やっぱり…
サッカーやめらんねぇわ…
「奏人」
「小野田…」
「流石だな!腕は全く落ちてないし。でも、すぐ逆転してみせるからな」
小野田は拳を俺に向けた。
「ほら!いつもの」
俺は小野田の拳に自分の拳をコツンと当てた。
それは俺と小野田が選抜チームで得点を決めた時によくやっていたことだった。
こいつ、まだ覚えてたのか…