さくら色 〜好きです、先輩〜
「あ、葵ちゃん来た」
葵は応援で集まってる生徒の間をすり抜けて、俺に目もくれずそのまま三嶋の元へ駆け寄って行った。
頬をほんのり紅くして幸せそうな表情をしている葵を見た瞬間、俺の心臓がズキズキと痛み出した。
原因はわかってる。
俺は桜井先輩に嫉妬してるんだ。
葵はきっと、さっきまで先輩といた。
先輩の居場所を聞かれて咄嗟に教えたけど、本当は行かせたくなかった。
先輩の元へ急ぐ葵の後ろ姿を見て、思わず腕を掴んで止めてしまった。
その後も、先輩の元へ行かせないように掴んだ腕を引っ張って何処かへ連れて行ってしまおうとも思った。
俺には葵にあんな幸せそうな顔させられない。
耐えきれず葵から目を離すと部室の方から桜井先輩と柏木先輩が歩いてくるのが見えた。