さくら色 〜好きです、先輩〜
私が見ているのに気付いたのか、男子生徒はゆっくりと振り向いた。
無造作にセットされている茶髪の髪。
腰まで下げたズボンと緩く結んだネクタイ。
ヨレヨレになった鞄。
少しだけ日に焼けた肌。
透き通った真っ黒の瞳。
先輩は髪を染めたり、あんな風に制服を着崩したりはしない。
それに纏う空気も私の知ってる先輩とは天と地ほど違う。
だけど、あの小麦色の肌や顔立ち、真っ黒の瞳は先輩と同じ。
その人は両手をズボンのポケットに入れて、私が瞬きするのを許さないぐらいジッと見つめてくる。
息をするのも忘れてしまいそう。
まるで時間が止まったような…
ここだけ世界が違うような…
不思議な感覚。
私達の間にはただただ桜が散っていく。