さくら色 〜好きです、先輩〜
「あら葵ちゃん!帰っちゃうの?」
「おばさん、遅くにお邪魔してすみません。明日部活なんで帰ります」
「いつでもいらっしゃい!気を付けて帰るのよ」
お母さんと話してる葵はだいぶ落ち着いたように見える。
だけど無理して笑顔を作ってる葵を見ると辛くて泣きそうになった。
「じゃあまた月曜日ね」
「葵?」
門を出て歩き出そうとしてる葵を呼び止めた。
「あまり自分を責めないでね」
「里美…」
「私が葵の立場だったら同じようにしたと思う。今までの関係が崩れたとしても。葵は桜井先輩が好きなんだよね?」
「うん」
「なら葵はその気持ちに正直にいればいいんだよ。中途半端な優しさとか同情は相手をもっともっと傷付けるだけだから。葵は間違ってない」
葵の目からは再び一筋の涙が流れた。
恋愛は皆が幸せになるなんて難しい。
誰かが成就すれば影で泣く人もいる。
だけど人はそうやって強くなって自分の幸せを掴んでいくんだと思う。
「恭介なら大丈夫だよ!恭介は強い!」
恭介の片想いは長かった。
葵に対する想いは本物だった。
だから失恋の傷が癒えるには時間が掛かるかもしれない。
だけど恭介なら絶対に乗り越えると思う。