さくら色 〜好きです、先輩〜
部屋を出て階段を降り、リビングのドアから少し顔を覗かせた。
お母さんは対面式のキッチンで洗い物をしている。
「行って来まーす」
お母さんに聞こえるように少し声を張り上げて言うと、そのままリビングの扉を閉めた。
玄関に座って靴を履いていると、後ろからスリッパをパタパタと擦って歩く足音が近付いて来る。
「あら、ご飯は?」
「いらないや…」
「昨日の夕飯もあんまり食べてないし。具合でも悪い?」
今はあんまり食べる気がしない。
先輩に拒否された気がして…
昨日の夜もご飯が喉を通らなかった。
「大丈夫だよ!行ってくるね」
私はお母さんにこれ以上心配掛けまいと笑顔を見せて、弁当を受け取り玄関を開けた。