さくら色 〜好きです、先輩〜

私を抱きしめる腕の力が強くなった。

こんなに密着していると先輩の胸の音が鮮明に聞こえる。

規則正しく胸を打つその音は私の緊張の糸を解いていく。


「葵」

「…っ!!先輩、名前…」


先輩に初めて名前で呼ばれて胸の辺りがくすぐったくなる。


「先輩じゃないだろ?」

「え…えっと」

「奏人って呼んで?」


今日の先輩は本当にとろけちゃいそうなぐらい甘くて、そんな先輩も凄く愛おしく思えた。


「奏人」


やばい…何これ…

ただ名前呼んだだけなのに恥ずかしくて先輩の顔が見れない。


せっかく落ち着いた心臓が再びドキドキと動き出した。





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