さくら色 〜好きです、先輩〜
「葵、上向いて」
そう言って、腕の力を緩める先輩。
上を向くと目線が重なり、拳二個分あった顔の距離がゆっくりと近くなる。
私は何故だかわからないけど自然に瞼を下ろした。
ーーーーーーガラガラガラ、ピシャ!!
「奏人、西原さん大丈夫か!?」
保健室のドアが勢いよく開くと、小野田先輩が息を切らして飛び込んで来た。
「ん?どうした?」
「…いや、何でもない」
先輩は小野田先輩の問いに冷静に答えた。
ドアが開く寸前に離れたから多分見られてはないと思うけど…
我に返ってから徐々に恥ずかしさが込み上げてくる。
保健室であんなこと…
キスされるかと思った。
さっきまでのことを思い出すだけで顔が熱くなる。
こんな顔見られたら誤魔化せないよ…