さくら色 〜好きです、先輩〜
先輩は繋いだ手を握り直した。
「ありがとな。でも本当大丈夫だから。葵と付き合う前までは夢に見てたんだ。歩道橋から落ちる時に見た夏樹の顔…毎夜魘されて一回は汗だくで起きてさ」
この前、先輩は私に事件のことを話してくれた。
その時の先輩の辛そうな顔が頭から離れない。
「でも今はぱたっと無くなったんだよ。それに事件のこと思い出すのも嫌だったけど、今は明日会うかもしれないって思っても怖くないんだ。葵のお陰だよ」
「私の?」
「葵は俺の太陽だから」
そう優しく微笑む先輩が愛おしくて無性に抱き締めたくなった。
だけどそんなこと恥ずかしくて自分からは出来ないから、代わりに繋いでる先輩の手を包み込むように両手で握った。
先輩は事件のこと乗り越えられてまた一歩夢に近付けたって言った。
私もそう思う、だけど不安もまだ残ってる。
先輩が乗り越えられても、再会したらまた向こうが何かしてくるかもしれない。
歩道橋から突き落とすような人だもん。
何をしてくるかわからない。