さくら色 〜好きです、先輩〜

「奏人…?」

「…矢野」


帰りの準備をしているとジャージ姿にエナメル鞄を持った人が先輩に声を掛けた。

何処かの選手かな?

選抜に入ってた先輩は知り合いが多くて、色んな学校の人から声を掛けられていたし…


「久しぶりだな…サッカー続けてるのか。良かった…足の調子は?」

「まだリハビリ少ししてるけど何ともない。矢野は元気にやってるか?」

「俺は…」


矢野さんという人は先輩の問いに、眉を下げて口籠ってしまった。


すると突然、矢野さんの後方から人影が現れ、酷い怒声を浴びせた。


「おい矢野!何してんだよ!!早く荷物運べよ!」


その声に矢野さんは肩をビクッと震わせた後、恐る恐る振り向いた。


「…あれ?…奏人じゃん!」


その人は矢野さんと同じジャージを着ている。

ちらっと見えたエナメル鞄には見覚えのある学校名が書かれていた。



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