さくら色 〜好きです、先輩〜
「…まぁいい。明日楽しみにしてるよ。せいぜい客席で歯食いしばって大事な仲間が敗北するとこでも見届けな」
夏樹さんのその言葉に悔しくて身体が震えてくる。
誰かをこんなにも憎いと思ったのは初めてだった。
自分の中に芽生えた真っ黒な感情が溢れてきそうで、私は唇をグッと噛み締めた。
何よりも先輩が心の中で泣いている、そんな気がした。
その後、夏樹さんはチームメイトの元へ戻って行った。
「奏人、ごめんな」
「何で矢野が謝るんだよ」
「ハハ…それもそうだな」
矢野さんは辛そうな表情を浮かべた。
「何があったんだ?」
「…うちのチームはもうあの頃とは全然違う。監督はただベンチに座ってるだけ、今までのレギュラーは退部したか転校したかでほとんどいない」
先輩の問いに、矢野さんはポツリポツリと話し始めた。