さくら色 〜好きです、先輩〜
「おい、無視すんなって」
「きゃあ!!」
横を通り過ぎようとした時、夏樹さんは急に私の腕を掴んで思いっきり引っ張った。
その反動で態勢を崩した私は、夏樹さんに抱き締められるようにもたれ掛かってしまった。
「おい!!何してんだよ!」
突然聞こえた怒声に肩を揺らした。
先輩は今までに見たことのないような鋭い目つきで夏樹さんを睨み付けている。
今、私の背中には夏樹さんの腕が回されていて抱き締めらてるような態勢になっている。
こんな姿…先輩に見られたくない…
私は腕に力を入れて夏樹さんの胸を押した。
だけどいくら離れようとしても男の人の力に敵うわけなく、もがけばもがくほど夏樹さんの腕に力が込められる。
私の頬に夏樹さんの胸が当たりそうな距離まで引き寄せられた。
い、嫌…!!
「先輩…助けて!」
「葵に触んじゃねぇよ!」
先輩はそう言って私の腕を引っ張って、夏樹さんから解放された私を自分の背に隠してくれた。
その背中はとても大きくて逞しくて、そして温かかった。