さくら色 〜好きです、先輩〜
「葵?」
「…っ!…ううん、何もないよ」
「またそうやって無理する。何度言えばわかんだよ…頼れって言ったろ?」
恭介は言い聞かせるように私の目を見つめてくる。
ホント、恭介には敵わないや。
優しくて、逞しくて、私はいつもその強さに助けられる。
「あのね…「「おはよう」」
私が口を開いたその時、聞き慣れた声が耳に届いた。
思わず身体を強張らせ、息を飲む。
この声…
誰なのか振り向かなくてもわかる。
動悸がして、一気に体温が下がる。
「先輩!おはようございます。聞いて下さいよ。葵のやつ、朝から溜息ばっかでおかしいんですよ」
恭介は私の胸の内を知らず、先輩にいつも通り声を掛けた。