さくら色 〜好きです、先輩〜

「…体調でも悪い?」

「だっ、大丈夫です!それより、早くバスに乗って下さい!もうすぐ出発ですよ」


私は勢いよく振り返って、練習通りの笑顔を作った。

だけど、先輩の事は直視出来なかった。


「…あのさ、無理ならすぐ萩原とか小野田に言えよ」


先輩はそう言ってバスに乗り込んだ。

恭介は私達の重い空気を感じ取ったのか眉を顰めている。


「…おい、今の……「「ほ、ほら!恭介も早く乗って。荷物は私が積んどくから」」


私はわざと言葉を遮って、有無も聞かずに恭介の荷物を持ち荷台に運んだ。

ふとバスを見上げると、一番後ろの席の窓側に座る先輩の後ろ姿が見えた。

少し寝癖がついていて、それだけでも胸が締め付けられる。


私、ちゃんと笑えてたよね…

大丈夫、だよね…


でもやっぱ、思ってたよりも…辛い。


苦しいよ、先輩…


バスの中ではミーティングが行われていて、鋭い若菜先輩にも突っ込まれることはなかった。

これから一週間、気が重いな…



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