さくら色 〜好きです、先輩〜

合宿施設に着くと休む暇もなく練習に入った。

強化合宿はいつもの数倍ハードで吐いてしまう部員が続出した。

マネージャーはそんな部員の介抱や飲料水の準備と補充などのいつもの作業に加え、部屋の掃除、食事の支度などで忙しかった。

昨日のことを思い出す余裕なんてないほどに。


そしてあっという間に先輩と話すことなく合宿最後の夜を迎えた。



「これより恒例の肝試しを始めます!3年はお化け役、1、2年はクジでペアを決めてこの先にある公園のドカンの中から一組一袋の花火を持って帰って来て下さい」

「「「わぁー!」」


盛り上がる部員を余所に私は一人呆然としていた。

肝試しがサッカー部の合宿恒例だなんて知らなかった…

私、お化け屋敷とか肝試しとか駄目なのに…


「若菜先輩、これって全員参加ですか?」

「ふふふ。そうよ?葵ちゃん!逃げられないわよ」


若菜先輩の不気味な笑みにゾクリと背筋が凍った。

そして3年生は驚かす気満々の生き生きした表情で森の中に消えていった…


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