さくら色 〜好きです、先輩〜

「きゃーーっ!!」


私は驚きと恐怖で我を忘れ、コースとは違う方向に無我夢中で走り出した。


「おい!葵!!待てよ!そっちはコースじゃないぞ!」


恭介が後ろで叫んでた気がするけど、私の足は止まる事なくどんどん森の奥に入っていく。

いつの間にか道はなくなり、生い茂った草を掻き分けながら只管走り続けた。


どのぐらい走ったかわからない。

気が付くと視界が開けた場所に出ていて、私はようやく足を止めた。

森の中では高くそびえ立つ木で隠れていた月や満点の星が姿を見せ、辺りを明るく照らしている。


「ここ、どこ?」


教室ぐらいの広さはあるだろうか。

不気味な森の中に突如現れる芝生が生えただけの空間。




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