さくら色 〜好きです、先輩〜
え…?
今、愛しい人の声が聞こえた気がした。
助けに、来てくれたの…?
「せん…ぱい…?」
声がした方向を目を凝らして見つめる。
すると、森の中で揺れる人影を見つけた。
「葵!」
私を呼ぶ声が聞こえたと同時に、はっきりと先輩の姿が見えた。
「先輩!」
私は勢いよく先輩の胸に飛び込んだ。
その瞬間、箍が外れたように一気に大粒の涙が溢れ出て来た。
「ひっく…先輩…」
「ハァハァ…もう、大丈夫だからな」
先輩は息を整えながら私をギュッと抱き締めてくれる。
その腕が力強くて、温かくてとても安心出来た。