さくら色 〜好きです、先輩〜

「もう落ち着いた?」

「はい。探してくれて、助けてくれてありがとうございました」


葵が森の中に走って行ったって聞いた時は本当に心臓が止まるかと思った。

探し回ってる時間、生きてる心地がしなくて森の闇が俺をまた真っ暗な世界へ飲み込んでいくような不思議な感じがした。

でもあの白い光を見つけた時、スッとその闇が消えたんだ。

やっぱり葵は俺の光だった。


距離をおいてから初めて葵の作り笑いでもなく悲しい笑顔でもない、心の底からの笑顔を見た。

俺はこの笑顔があるから頑張れる。

少しの沈黙も気まずくなかった。

優しい時間が流れていた。



なのに…


「先輩、私と別れて下さい」


葵は顔色一つ変えなかった。


「…どうして?」

「冷めちゃいました。私、はっきりしない人って駄目なんですよね」


これは…

本当に葵なのか…?





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