さくら色 〜好きです、先輩〜

「あ!忘れてた。若菜、顧問に呼ばれてたんだ。行くぞ」

「え?…ああ!そうだったね」


二人はそのまま昇降口の方へ走って行ってしまった。


「はぁ…あいつらやりやがった」

「え?やったって何を?」

「俺らを二人にする為の芝居だよ、あれ」


芝居?嘘でしょ?

二人にする為って、何でそんな…

急にされても心の準備が出来てないよ…


先輩と二人っきりになるのは合宿振りで、私の頭の中は軽くパニック状態を起こしていた。

暫しの沈黙と気まずい雰囲気が流れる。


すると意外にも先輩の方から話し掛けてくれた。


「浴衣…何色着るの?」

「む、紫です」

「そっか。似合いそうだな。…楽しみにしてる」


先輩は口元に笑みを浮かべ、校庭に歩いて行った。


胸がドキドキしてる…

先輩が楽しみにしてるって言ってくれた。

例えその場しのぎだとしても嬉しかった。


久しぶりに二人っきりになって、私の空っぽの心が少しだけ満たされた気がした。

やっぱり私、先輩が好きだよ…




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