さくら色 〜好きです、先輩〜
ーーーーガタン。
何の音もしない校庭にドアが閉まるような音が響いた。
部室棟を見るとさっきまで暗かったサッカー部の部室に明かりが灯っている。
先輩…?
私は部室から目を離さないように走った。
心臓がドキドキする。
この中に先輩がいるかもしれない…
私はドアに手を掛け深呼吸をして、ゆっくり開けた。
「…いない」
部室には誰の姿もなかった。
じゃあどうして部室に電気が?
私が来た時は絶対についていなかったのに…
もしかして泥棒!?
頭の中がこんがらがってあたふたと部室の中を歩き回った。
「…これ、誰の?」
マネージャー専用のロッカーが少し開き、その扉に外から紺色の傘が掛けられているのに気付いた。
そのロッカーは筆記用具や洗濯、掃除道具等が入っていて、マネージャー以外触ることはない。
「誰か間違えて掛けたのかな…」
私はその傘を傘立てに入れようと、止め紐辺りを掴み持ち上げた。
すると傘の手元が引っ掛かって、ギィッと音を立てながらロッカーが開いた。