さくら色 〜好きです、先輩〜
「犯人の父親は…政治家だった。警察の上層部には圧力を掛けてマスコミは黙らせた。学校側もチームメイトも不祥事は隠すし、巻き添えになった家族には多額の慰謝料を払った」
得体のしれない…黒いドロッとした感情が込み上げてきて全身に染み渡っていく。
そんなドラマみたいなことが本当にあるの?
そんなことが許されるの?
「犯人は今も何もなかったように生活してる。先輩はスポーツ推薦だからサッカー出来なくなったら学校にいられなくなるし、誰も信じられなくなって転校してきたんだって」
先輩…
先輩はどれだけ辛かったの?
私、何も知らないであんなこと言って…
「ホント…最低だ」
「葵…」
小刻みに震える唇を噛み締め、瞼を閉じる。
溢れてくる涙を止める術を私は知らない。
目尻から零れた涙は頬を伝い、制服を濡らしていく。
それから私達は学校まで何も話せなかった。