さくら色 〜好きです、先輩〜
「どうしたの?」
那奈は私の数歩先で振り返ると、すぐに私の視線の先にいる人物に気付いたようだった。
「那奈、ごめん。先に行っててくれる?」
「…わかった。購買で待ってるね」
那奈は私の肩に手を乗せると、「頑張って」と耳打ちをして渡り廊下の先にある階段を降りて行った。
ありがとう、那奈。
後で那奈に話そう。
好きな人がいること。
その人の力になりたいこと。
私と先輩以外、誰もいない渡り廊下。
開けられた窓からは笑い声や近くを飛ぶヘリコプターの音が聞こえてくる。
先輩の今にも消えてしまいそうな背中と寂しそうな横顔に胸が締め付けられて苦しい。
私はドクドクと鈍い音を立てる心臓に手を当てて深呼吸した。