さくら色 〜好きです、先輩〜
「もう、サッカーはやめたんだ」
先輩はそう言って、俯いたまま私の横を通り過ぎた。
やめた…?
先輩が、あんなに好きだったサッカーを?
「待って下さい!」
私は無意識に先輩を追い掛け、行く手を塞いだ。
「やめたって…冗談ですよね?だって、昨日公園で練習してたじゃないですか…」
昨日の様子だと足はもう何ともなさそうだった。
もしかして本格的にプレー出来る程回復していないの?
それとも…
「先輩は、サッカーが大好きなんですよね?」
サッカーを嫌いになってしまったの?
先輩は眉を顰め、私を睨みつける。
だけど、私は先輩の真っ黒な瞳が揺れたことを見逃さなかった。
「サッカーなんて…好きじゃない」
そう言った先輩の声はより一層低く、微かに震えていた。