さくら色 〜好きです、先輩〜
先輩があんなに大好きだったサッカーを“好きじゃない”って言った。
大好きなものをそんな風に言う事はそれだけでも辛い…
先輩は嘘が下手なんだね。
大嫌いって言えなかった先輩。
本当は大好きでサッカーがしたいって、私にはそう聞こえた。
私に出来る事。
正直まだわからない。
里美が言うように、私が先輩の心を温められるなんておこがましいことは思ってない。
だけど、もう一度先輩がサッカーをしている姿を見たい。
たくさんの仲間に囲まれて、
大きく口を開けて笑って、
瞳を輝かせて、
生き生きしてて、
夢を追いかける先輩。
そんな先輩を私はもう一度見たい。
だから、私は待ってよう。
先輩が大好きなフィールドで、
先輩を待ってる人達と共に。
「葵、教室戻ろ」
スッキリした面持ちの那奈が、寝転がった私の顔を覗き込んで来た。
「もういいの?」
「うん!ほら、次体育だから着替えなきゃいけないし」
私は那奈が差し伸べてくれた手を取り、立ち上がった。
ぐーっと空に向かって背伸びをし、春の穏やかな空気を思いっきり吸い込む。
「んーーーっ!!……よしっ!」
那奈と先生の間で止まってた時間がまた動き出した。
次は私の番だ。
新たな決意を胸に、私達は先生と別れて屋上を後にした。