時は今



 帰宅して、部屋の机の上に鞄を置いたところでメールが来た。差出人は真白。

『先輩、今、何してますか?』

 何してますか?の文末に、可愛いネコの絵文字が様子を窺うような顔でふよふよ動いている。

 そういえば、真白は今日器楽の試験があったはずだ。合格したら先輩何処か連れて行ってと言っていたが…。

『家に着いたところ。器楽どうだった?』

 メールを送ると、しばらくして返信が来た。

『追試ですー。うえーんどうしたらいいですかー?先輩教えてー』

 ネコの絵文字がほろほろ泣いている。

 真白には悪いと思ったが、何となくらしくて可愛かったので、四季は笑ってしまった。

 ピアノはレベルに応じて最低限必要な練習量というものがあるが、真白のように小さい頃にピアノを経験していない子の場合、仕上げたい曲を弾くためには何処を鍛えたらいいのか、感覚的にわからないという印象がある。

『明日放課後なら時間取れるよ。試験曲は何だったの?』

 そうメールを返した。

 すると。

『ツェルニー40番練習曲です。40番のうちから自分で2曲選んでいいんですけど、もうそこからどれが弾きやすいのかがわからないんですー』



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