時は今



 そう言われても忍にはよくわからなかったため「そうなのかな」と呟く。

「私は一緒にいたくなるような人なのかな…。そんなに話が上手なわけでもないし」

「お話が上手とか下手とかいうより、涼は忍ちゃんといて居心地いい。緊張しない」

「そうなんだ。…緊張しないのはいいね」

 そういえば、四季とは初めて会話をした時からそんなに抵抗を感じない。

 四季の持っている雰囲気のせいだろうか。

「四季は私じゃなくても誰にでも優しい気がするけど」

 そう言うと、涼は少し間をおいて答えた。

「そうかな。優しさの種類が少し違う気がする」

「違うって?」

「四季くんは忍ちゃんと話している時、会長と話している時みたいに、四季くんの方も幸せそうにしてる。たぶん四季くんが忍ちゃんに向ける優しさがあるとすれば、それは四季くんが忍ちゃんにそうすることが嬉しい種類の優しさだと思う」

「そうなの」

 涼にはそう見えるのだ。

 涼はそういったことに疎いようなところがあるが、ある意味では鋭いのかもしれない。

(どうして私なんだろう)

 四季に想われる要素はない気がするのに。

「感覚おかしくなってるのかな…」

「え?」

「普通、人に優しくされたり、好かれていたら、嬉しいはずなのに、私、何だか心が動かないの。ひどい人間みたい」

 だから罪悪感を感じるのだろうか。

 忍の淋しそうな表情は自分自身の心に対してだろうか。

 涼は忍の手を取り「ひどい人間じゃないよ」と言う。

「忍ちゃんがひどい人間なら、こういう傷つき方はしてない」



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