時は今
体育の教諭が呼ぶ声がする。
「いけない。四季くん、またねー」
「後で見せてね!」
忍もいつになく温かい表情で「またね」と言った。
四季は「うん」と答えてスケッチブックに目を戻す。──と、そばに潜んでいる人物にびくっとした。
「四季ぃぃぃおのれはずいぶん幸せそうだなゴラァ」
「…何してるの本田くん」
「クラスの女子のみならず音楽科の女子まで独り占めか!いい御身分だな!」
「本田くんも喜ばれるような絵を描いてあげたらいいと思うよ」
「簡単にそれが出来たら苦労はないんじゃ!」
四季は四季で心に積もる思いもあり何か言いたくもなったが、本田駿の頭をなでてみた。
「本田くんはバスケ出来るじゃない?僕には出来ないから、本田くんは本田くんに出来るものがある、でいいんじゃないの?」
「いや、それはそうだが。正論だが。しかし何か俺は腑に落ちん。何故女子はお前の方に集まる?」
「……。正直に言っていい?」
「何だ。言え」
「教室で下ネタ連発するからじゃない?それで彼女になりたがる子、あまりいないと思うよ」
「……」
まともにパンチを喰らってしまい、本田駿はよろよろと席に戻って行ってしまった。
「あーめずらしい。本田が元気なくした」
「いや、本田にはあれくらい言っていいと思う」
会話を聞いていた立川たちが苦笑している。四季は自分とは次元の違う人物でも見る感じで、しょげている本田駿を見た。
「本田くんて元気だよね。何でいつもあんなに元気なんだろう」
「いや四季、元気は元気でもさー」
本田駿の隣りのグループにいた吉野智が「ファイト、エロ男子高生」とエールを送った。
立川たちが爆笑した。