時は今
「何?」
ヴァイオリンとピアノの音に、音楽科で残っていた生徒はすぐに反応する。
尋常ではない音。
それが歌う。響き合う。
「これ、四季くんのピアノじゃないの?」
「ヴァイオリン、揺葉さんぽい」
「えーふたり弾いてるの!?」
聴きたい聴きたいと人が集まってくる。
音楽室の前にはいつのまにやら人だかりが出来てしまった。
「うわ…マジですげー」
「何?由貴と桜沢さん、四季と揺葉さんで、東西対決でもしてんの?」
「知らんけど」
音楽室で演奏されているそれのレベルの高さに、聴いている方はもはや言葉もない有り様である。
「揺葉さん、手、怪我してんじゃなかったっけ」
「ていうより、四季くんも、あんな弾き方してたら身体持つの?」
「…根性だなぁ。ぜってー四季も揺葉さんも努力してるから」
それを沈黙でじっと聴いていた高遠雛子が「──どうして?」と呟いた。
「揺葉さんがどうしてヴァイオリン弾いてるの?ここまで練習する必要ないじゃない。歌のソロだって揺葉さんが歌うんだから」
生徒たちは気まずそうに顔を見合わせる。
「ヴァイオリンは練習なのかもしれないからいいんじゃない?」
「そういう問題じゃないのよ!」
雛子が叫んだ。