時は今
いろいろなことがいっぺんに起こり過ぎて、頭の中の整理がつかない。
というより疲れた頭では何か考えようとしても思考が停止してしまったまま、動かない。
由貴にどう説明すればいいのか──。
携帯を片手に考えていると、メールが入った。
忍だ。
『今日はありがとう。いろいろ変になってた』
改行。
『私、四季のこと愛せると思う。つき合ってください』
四季は一瞬真っ白になる。
(つき合ってくださいって──)
「嘘…」
完全にキャパオーバーになってしまい、四季はソファの上に倒れた。
しばらくぼーっとしたまま何も考えられない。
やがて、メールではなく由貴の携帯に直接かけた。
『──四季?』
待っていたのだろう。由貴にはすぐに繋がった。
『どうしたの?大丈夫だったの?』
「──うん。ごめん。今キャパオーバー」
『何があったの』
「…忍が」
『忍が?』
「僕とつき合ってもいいって言ってくれた」
『──』
由貴も電話の向こうで一瞬キャパオーバーになったようだった。
『──。それ、いろいろな過程、すっとばしてる話だよね?』
「うん。うまく話せない。…さっきまで忍、壊れてたんだけど」
『壊れてたって…』
「演奏の途中で音楽室を出ていくから、心配になって探しに行ったら、恐ろしく高い所に立ってるし、僕に由貴じゃないの?って訊くし、好きな人のことで泣くし──」
由貴は同じような状況の忍を見たことがあったのだろうか。「うん、俺が初めて忍に会った時がそんな感じだったよ」と言った。
『雰囲気が普通じゃなかったってことだよね?』
「うん。…そういうことあったんだ、前にも」
『あった。──でも気にしなくていいよ。忍が壊れるのは気が許せる人の前でだけだから。その時俺の横には涼がいたから、そうだったんだと思う』
「……」
『たぶん普段頑なな分、気を許せる人の前ではそうなってしまうんだよ。反動というか』
そうなのだ、と四季はそれで腑に落ちる。