時は今



「忍、僕に気を遣ってそう言っているわけじゃないよね?」

 最も不安材料になっているそれを四季は口にする。由貴はきっぱり否定した。

『うん。忍は同情でつき合うような子じゃないと思う』

「……」

 それは四季にもわかるのだが。

(──だってさっき、由貴が好きだって泣き崩れていたんだよ)

 じっとその気持ちを受け止めることしか出来ない四季には、つらいことだったのだが。

 それともその感情を誰かに受け止めてもらったことで、楽になったということだろうか。





「忍と話してみる」

『その方がいいよ』

「──涼ちゃんとの演奏、またいつか聴かせて?忍の気持ちが落ち着いたら」

『うん。そうする。──四季』

「ん?」

『忍、いいかげんな気持ちではつき合わない子だと思う。それだけ四季のこと大切に想ってるんだと思う』





(四季のピアノがいいの)





 無意識下の中で忍の心の変化が見えた言葉。それを思い出した。

 ──本当に僕が幸せに出来たらいい。



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