時は今



「──あんた、今日学校休みな」

 早瀬がすぱっと言い切る。

 四季は制服を着て楽譜を見ていたが「忍が心配するし」と口にした。

 微熱があるのである。

「心配するって、学校行って悪化させたら余計心配させるだろ」

「──」

 悪化させないとは自分では言い切れないのが四季である。

「連日フルで外に出ているから身体に負担が来ているんだよ。美歌みたいなのならともかく、お前にはオーバーワーク」

 しばらく寝とけ、と言い渡されてしまった。





 朝、四季から「今日休むから」とメールが入っていた。

 忍は由貴に何となく様子を聞きに来てしまう。

 こんな時、四季をよく知っている人物が由貴であることが、複雑ではある。

「うん。休ませられたみたい。四季は来たかったみたいだけど」

「そう」

「そんなに心配することないよ。大事をとったんだと思う」

 忍は「ありがとう」と言うと教室に帰ろうとした。由貴が呼び止める。

「──忍」

「何?」

「四季に返事したって聞いたけど」

「うん」

 忍はいくぶんすっきりとした表情で笑った。

「四季といると、私、ほっとするみたい」



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