時は今



「早織さんもえらい綺麗な人だったが。それを思い出した」

「お祖母様が?」

「若い頃の写真は見たことはないかね?」

「いえ」

「一度見せてもらうといい」

 詠一はにこにこした。

「あら、何のお話ですか?」

 品のよい声がした。

「四季さん、お友達が見えられていますよ」

「──お祖母様」

 早織の横でお辞儀をする人物を見て四季は身を起こした。

「…忍」

 詠一が忍の顔を見て「おや」と声をあげる。

「話をしていたら」

 早織がテーブルの上にお茶と和菓子を置いて、縁側に出る戸を開けた。

「四季さん、起きられますか?詠一さんもおいでなさいな。いいお天気だわ。縁側でお茶でも飲みましょう」

 詠一は忍と四季の様子を窺うように言った。

「早織さん、彼女がいらしたなら私らは邪魔ではないのかね?」

「あら。そうなんですか?」

 早織は四季を見て、ふふっと笑う。

「年寄りは年寄り同士仲良くしていますよ。何でしたら四季さんたちはお庭でも散策してらっしゃいな」

 早織は四季に上着を羽織らせてやった。



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