時は今
忍が四季の家を訪ねようとしていると、実は由貴も同じことを考えていたらしい。
だが気を回したのだろうか、由貴は忍に「忍が行くなら、忍ひとりの方がいいよ」と言ってくれたのだ。
(由貴と一緒に行くということにならなくて良かった)
忍には由貴からそう言い出してくれたことがありがたかった。
縁側から出ると秋になりかけの庭が忍を出迎えた。桜や楓の木がある。紅葉の頃は綺麗だろう。
「花、可愛い」
忍が庭に咲いている花に目をとめて腰をおろす。四季もその隣りに座った。
「──忍が来てくれるとは思わなかった」
忍は四季の目を見た。
「思ったより元気そうで良かった」
「午前中は眠っていたから」
「普段、和服なの?」
「時々ね」
「ふーん」
忍は庭が気に入ったらしい。四季が絵が上手いのが何となくわかった、と口にした。
「このお庭そのものが絵になってる」
鋭いなと四季はその指摘に感心する。庭の手入れをしている庭師はよく祈と話をしているからだ。
忍の横顔に見とれていると、忍が「四季は私といて幸せ?」と聞いてきた。
「昨日ね、帰り道に智と話したの。私が今の私のまま四季とつきあったら、四季を傷つけてしまうかもしれない、四季は私にとっていいかげんな気持ちではつきあえない人だって。そしたら、智は、傷つけてみれば?って言うの。つきあわなくたって他の男が好きなお前を見ているだけで四季は傷ついているんだから、つきあってみて本当にダメなのか四季を納得させてみれば?って」
「……。忍は僕のことどう思ってるの?」
四季は不安げに聞いた。忍は甘やかな表情になった。
「ほっとする人。四季といると私は私でいられるみたい。だから四季を見ていると私も四季に何かしてあげたいと思う」
「……」
「…四季、昨日何も言わなかったでしょ?四季も言っていいよ。私は昨日私の思っていること四季に聞いてもらったから」