時は今



「忍は由貴のこと好きだってわかってたから、何があっても動じないでいようと思ってた」

「……」

「──でもあんな泣き方されたら…忍には由貴の存在が大きいのかって思ってしまう。僕は忍の気持ちを受けとめることしか、それ以外に何も出来ないのかって…」

(好きなのに)

 四季の目から涙がこぼれた。

(忍を想っているのは僕なのに)

 忍の指先が四季の頬にふれた。傷ついた腕が四季を抱きしめる。

「ごめん。もう言わない」

「──」

「もう終わりにする。ごめんね。傷つけて」

 忍の方から抱きしめられて、四季は夢じゃないと思った。

 ふれたかったものが今すぐそばにある。

 その声も、ぬくもりも。

 四季は忍を抱きしめた。



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