時は今
いつも四季に何かとつっかかってくる黒木恭介の方は意外に冷静な反応だった。
「揺葉忍ね…。まあ相応じゃねぇ?というより揺葉忍を彼女に出来る四季に感心した」
「感心?」
「いい女だとは思うけど、いい女過ぎてこっちが気を遣うっていうかさ。俺には現実的にたとえ選べるとしても選べないレベルの女」
「そうなんだ」
「そうだって。たとえば本田なんかでも、揺葉忍とデート出来るとして、こいつが揺葉忍を楽しませられるかっつったらちょっと想像出来ねぇ」
「…本当のことゆーな」
がっくしと本田駿が肩を落とす。そこで四季は初めて、自分が忍といる時は本当にごく自然に一緒にいて楽しかったのだと気づく。
「──そういえば、僕、忍といてそんなふうに考えたことってない」
「だろ?お前、普通に揺葉忍と会話出来てるし」
恭介の隣りで駿が嘆く。
「あー…。それにしたってショックでかい」
「お前の場合、単にいい女が目の保養になってるだけだろ」
「保養でいけないか?美しいものを愛でるのは世の常」
駿は言い切っている。恭介は「ま、いいけど」と流した。
「…俺は四季がこんなにあっさりひとりに決めるとは思わなかったなぁ」
つっかかるネタをひとつ無くしたような気分で、恭介が物足りなさそうにした。四季が答えた。
「気持ちを傾けられるのはひとりだけだよ」
「ふーん…」
何か俺も彼女欲しくなった、と恭介がひとりごちる。駿はふと吉野智を見た。
「吉野さんはどんな男がいーの?やっぱり四季とか由貴みたいなのはいーの?」
「え…」
急に話を振られて智は考えるように上を見た。
「うーん…。四季も会長もいい男だけど私が合うような男はまた別にいると思う。どれくらい人気があるかとか魅力的かとかじゃないんだよね。うまく言えないけど」
理由はわからないけど好きになってしまう奴っているっしょ、と笑った。
「本田駿は吉野さん的に何点ですかー」
「何点、じゃなくてさー」
智は首を捻った。
「本当に好きな人?いたら人間変わると思う」
駿が「?」という表情になり、恭介が「吉野さん、こいつにはわかんないから」と手を振った。