時は今



 音楽室に来ると四季はすでに練習している輪の中に溶け込んでいた。

「あ、会長だー」

「四季くん、会長来たよー」

「──由貴」

 四季は由貴の姿を見てふわっと笑顔になったが──。

「ごめん、四季」

 由貴は四季の腕を掴むと頼み込んだ。

「あまり眠ってない。少しだけ寝る。10分経ったら起こして」

 言うなり、音楽室の隅に転がると眠ってしまった。

「わー…会長お疲れ?」

「ほら、生徒会、文化祭のこととかもあるから」

 由貴をそのままにしておくわけにも行かない。四季は「ちょっとごめんね」と言って、由貴のそばに行くと隣りに座り込んだ。

 忍が心配してやって来る。

「由貴?大丈夫なの?」

 四季は「たぶん」と答える。

「朝は元気だったから。頑張り過ぎかもしれない」

「そう」

 由貴のことをよく知っている四季が言うのだから、そうなのだろう。

 由貴はものの数秒で熟睡しているようだった。そこに四季がいるから安心して熟睡しているような気もする。



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