時は今
その日の最後の授業だけ早退して四季は双葉高校に行った。
高校への行き方は黒木恭介が教えてくれた。恭介の父親は双葉高校前の弁当屋をしていて、その道はよく知っているらしかった。
正門前に立って待つ。授業が終わり、双葉高校の生徒がまばらに帰り始めた。
四季は女生徒に聞いてみることにした。
「あの…。ちょっと、いいですか?」
話しかけられた、女子たちは色めきたつ。
「わー、白王の人だ!」
「かっこいいんですけど!」
「なになにー?しつもんー?」
「生徒のこと聞きたくて。ここに『木之本真白』っていう女の子いる?」
女子は顔を見合わせた。
「キノモト…誰だっけ?」
「あ、あの子じゃない?一年の。最近転入してきた子。可愛い子いるでしょ?」
「あー。いるいる。男子騒いでたもん」
四季はそこまで確認がとれて、ああ、本当に真白がいるのだ、と思う。
「いるんだ。ありがとう」
「何ー?あの子のこと好きなのー?」
四季は困ったように言った。
「少し…話したいことあって。僕がよく知らないうちに、前の学校、転校したみたいだったから」
その雰囲気に女子も真面目な表情になる。
「そっかー。じゃ、話出来るといいね」
「うん」
またねー、と手を振られた。
その幾らも経たないうちに。
「──先輩」
四季は声のした方を見て──胸が痛くなった。
「真白」
真白と一緒に歩いていた関結実子が真白と四季とを交互に見て驚いている。
「ま、真白…。真白の好きって言ってた先輩じゃない?」
真白は顔を紅潮させた。
だめだ。つらい。顔、会わせられない。泣きたくなってしまう。
真白はくるりと四季に背を向けると、走り出した。
あの雪の日と同じだ。
「あ…。ま、真白!?」
おろおろする結実子に、四季は「大丈夫だから」と言い追いかけた。
「──真白!」
名を呼ばれ、真白が怯む。
先輩が追ってくる。
私は先輩についていてあげられなかったのに。
どうして。