時は今
泣き過ぎて頭がぼーっとする。自分の中が空っぽになってしまったみたいだ。
今は四季が隣りに座ってくれているだけで、何だかほっとしていた。
四季は落ち着ける場所を探す能力が備わっているのだろうか。気がつくと雰囲気のいいカフェの一角に座らされてホットココアを飲んでいた。
「先輩、こういうところ何で知っているんですか?」
「うん…。僕、風邪ひくとひどくなること多いから、何処に行っても急に雨が降ったりしても大丈夫なようにって、無意識的にそういう温かい場所、探しているみたいなんだよね」
このお店を知っていたわけじゃないんだけど、と言っている。
「先輩らしい…。納得です」
「それに、真白はこういうところで甘いもの与えていたら間違いないと思って」
「はぅ。何ですか、その認識。当たってますけど」
「当たってるんだ?」
クスクス笑っている。
「…先輩」
「何?」
「もう良くなったんですか?」
「うん。一応は。…定期検診はあるけど今のところひっかかってないから、これがある一定期間大丈夫なら」
「そうですか」
真白は手に持っていた携帯のストラップを見た。
──言わなきゃ。自分から。
「あの…。先輩がこの間、彼女らしい人連れてるって話、聞きました」
「──」
「揺葉忍さん。先輩の今の彼女ですよね?」
「真白」
「私、今は先輩に会える資格ないって思ってました。でも…このままだと、あたしも先輩もずっと前に踏み出せないんだって気づきました。だから、あたしから言います。先輩、揺葉忍さん、大切にしてください。私が今、先輩に出来ることってこれくらいしかありません」