時は今



 真白は笑顔になった。

「あたし、大丈夫です。というより、大丈夫になりたいんです。好きな人がつらい時、しっかり立てるような人間じゃなきゃ、あたしはあたしが嫌いになる。だから大丈夫な人間にさせてください。だから先輩、あたしと別れてください」

 お願いします、と綺麗に頭を下げられた。

 四季は「…顔、あげて」と言う。四季の目が潤んでいた。

「…ありがとう」

「先輩」

「好きになってくれて、ありがとう」

 真白の顔がくしゃっと笑う。

「あたしも。ありがとう、先輩」

 真白は四季に貰った携帯のストラップをかざして見せた。

「これ、願かけしてるんです。叶ったら先輩に会える木之本真白、になるはずなんです」

「…僕に会える?」

「ふふ。もう行ってください。あまり長くいると『先輩、やっぱり行かないでー』って泣くかもですよ」

「えー?」

「風邪みたいにこじれたらやばいですよ!ホントですよ!」

 真白は「ほらほら」と四季の背中を押した。

 四季は笑いながら「またね」と言う。

 真白はピッと敬礼した。

「はいです!」





 四季が行ってしまうのを見て、真白は良かった、と思った。

 今日は泣こう。

 泣いてまた歩き出そう。



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