時は今
話したいことはあったはずなのに、四季とこうしてふれ合っていると、話さなくてもいいことのような気がしてきた。
問いつめるのが四季を苦しめてしまうだけだったら、それは何も意味をなさないのではないかと思ってしまうからだ。
けれど。
「…四季」
「何?」
「ひとりで眠るのは怖い?」
「どうしてそんなこと聞くの」
「眠っている時、少し苦しそうだったから」
「──」
四季は「時々夢を見る」と答えた。
「泣いて目が覚めるような夢を見て、起きても気分が落ち込んでいたりする。眠って、再び目を開けた時には生きているんだろうかという不安があるからなのかわからないけど」
「死ぬことは怖い?」
「…うん。でも」
「でも?」
「忍とこういうこと話していると気持ちが落ち着く。不安なものはずっと不安なもののはずだから、それは別として。こういうことを話しているのは、ただ話しているだけなんだけど気持ちが鎮まってくる」
「──。四季が眠っている時にね、愛しいってこういう感情のことを言うんだろうかとか考えてた」
「愛しい?」
「うん。何て言うんだろう、四季があまりつらくないように生きられたらいいなとか…。そういった、その人を見てふと考えてしまうような気持ち。それは愛しいと思っていなければ、思わないでしょう?普通。その人が幸せでいてくれたらいいなって思うのは」
忍は何処か物憂げな表情の四季を見て優しい気分にさせられる。
それはたぶん四季だからだ。四季じゃなければこんな気分にはなれない。
「私がそばにいることが四季の不安を和らげるなら、私も幸せだと思う。だから四季は安心して。私を必要として」