時は今
「未成年飲酒?」
悪意のない顔で、四季に突っ込まれて、隆史が「しまった」というような表情になる。
「えーと…今の、忘れてくださいね。揺葉さん。試しにちょっと飲ませてみただけで、テーブルマナーくらいの量ですよー」
「親父、墓穴掘ってる…」
「由貴くんも飲んだじゃないですかー」
「俺は親父の許可得て飲んだからね」
四季が笑った。
「僕、テーブルマナーのワイン、全部は飲めなかったよ。由貴がお酒弱くても問題ないよ」
「祈くんが見かけによらず結構強いんだよなぁ」
「そうかな。そんなに飲んでないよー」
「いや、僕よりかは飲んでるから」
由貴が「親父」と、横から急かした。帰りたいというのもあるのだろうが、早く四季を休ませたかったのだろう。
それで隆史と由貴は帰って行った。
「…急に静かになったわね」
忍がお茶を片し始めようとして、美歌が慌てて代わる。
「忍さん、美歌が片づけるわ。うち、茶器が結構あるから、何処に片づけたらいいのか迷うと思う」
「そう?」
「うん。今度、疲れていない時に教えるわ」
「そうね。…ありがとう」
美歌に片づけは任せて、忍は四季がまだ庭から聴こえる歌に耳を傾けているのに気づいた。
「──四季」
「ん…」
四季は忍の方を見ると、興味深そうに言った。
「彼女が歌うたえるっていいね」
「え?」
「樹、高遠さんをプロデュースしたいような気持ちで歌ってる。たぶん。高遠さんも心地よく歌える空間を樹が作ってくれているから、今この瞬間は樹を拒絶していない」
樹と雛子の歌声は綺麗なハーモニーを奏でていた。
「そうね。…そうかも」
「樹の気持ち、何となくわかる」
「高遠さんをプロデュースしたいの?」
「僕は揺葉忍」
真っ直ぐにそう言われて、忍は返す言葉を無くしてしまう。
四季は心地よい歌を耳にして気分がいいのか、花を愛でるような眼差しを忍に向けてきた。
細い指先が忍の頬を滑ってゆき、一瞬のような永遠のような時が流れた。
「好きな人を目の前にしていると──時を忘れるって本当だなって思う」
「……」
「忍も何か話して」