【短】セカンド・ラブ

そして、いつもみたいに笑った。

でもそれさえも、あたしの中の何かを壊していった。


「優しくなんかない、違う優しくない。ただの弱虫なんだ」


そう自分に否定するように喋ると、亜梨沙は目を潤ませた。

…なんかあたしまで、泣きそうなんだけど。


「綯捺は優しいですよ」


潤ませたまま亜梨沙は笑った。


「違う、優しかったら…!」


──あんなこと、させる筈がない。

今でも覚えてる。怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになった顔。


「綯捺さん、あたし達が出逢ってどれくらい経ったと思いますか?」

「……一年くらい」

「そうです!一年記念です!」


何故か頬を赤らめながら「覚えててくれてたんですね」と言った。


「一年経ったのに、あたし達あまりお互いのことよく知りませんよね。でもあたしそれでも良いと思ってました…心地いい関係でしたから」


そこで亜梨沙は一呼吸置いて、ゆっくり顔を上げた。


「だけど、やっぱりそれじゃ虚しいんです。綯捺さんが他人と距離を置いてるのは気づいてました」


その言葉にあたし目を見開いた。

…気づいてたのか。


「でもまだ無理に聞くつもりありません。だから、まずあたしの話をします」

「っ、え?そっち亜梨沙ん家じゃ…」

「きゃー!初めて名前を呼んでくれましたね!あ、ケーキ屋です。一年記念に」


まるで恋人みたいな言い方をしながらあたしの腕を引っ張った。

< 20 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop