【短】セカンド・ラブ
そして、いつもみたいに笑った。
でもそれさえも、あたしの中の何かを壊していった。
「優しくなんかない、違う優しくない。ただの弱虫なんだ」
そう自分に否定するように喋ると、亜梨沙は目を潤ませた。
…なんかあたしまで、泣きそうなんだけど。
「綯捺は優しいですよ」
潤ませたまま亜梨沙は笑った。
「違う、優しかったら…!」
──あんなこと、させる筈がない。
今でも覚えてる。怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになった顔。
「綯捺さん、あたし達が出逢ってどれくらい経ったと思いますか?」
「……一年くらい」
「そうです!一年記念です!」
何故か頬を赤らめながら「覚えててくれてたんですね」と言った。
「一年経ったのに、あたし達あまりお互いのことよく知りませんよね。でもあたしそれでも良いと思ってました…心地いい関係でしたから」
そこで亜梨沙は一呼吸置いて、ゆっくり顔を上げた。
「だけど、やっぱりそれじゃ虚しいんです。綯捺さんが他人と距離を置いてるのは気づいてました」
その言葉にあたし目を見開いた。
…気づいてたのか。
「でもまだ無理に聞くつもりありません。だから、まずあたしの話をします」
「っ、え?そっち亜梨沙ん家じゃ…」
「きゃー!初めて名前を呼んでくれましたね!あ、ケーキ屋です。一年記念に」
まるで恋人みたいな言い方をしながらあたしの腕を引っ張った。