【短】セカンド・ラブ
「…つまり、父親の願望を叶える為に辞めた、と」
「……はい。親には言ってあるんですが、兄ちゃんには言ってません」
「は?言ってないの」
その言葉にゆっくり頷く。
「──で、なんであの人を避けてんの」
「…あまり学校のことを触れられないようにと、それで兄ちゃんに責任を感じてほしくないんです」
そうもんかな、むしろ話してくれなかったことが悲しいんじゃないか?
まあ、それはあたし個人的な意見だけども。
「…いつかバレるなら自分から話してみれば」
「でも、あっちも避けてるし…」
「それは、亜梨沙が避けてるから」
話す度にどんどん声が弱々しくなっている。
亜梨沙は顔を伏せて、前髪で表情が見えない。
「…じゃあ、その時は…側にいててくれませんか?」
「急がなくていい、気持ちの整理がついたらで」
「ありがとうございますっ!…あ、鼻血が」
「………」
そこは泣いて鼻水つけてもらった方がまだ、良かった。
「あー、雑用ばっかり使いやがって……ん?は?」
こいつはつくづくタイミングの悪い奴だと、首を傾げる新人教師を睨み付けながら思った。